正しいのは?

 「ゼロはルルーシュです」


**********


生徒会メンバーは目の前で起きた信じられない光景に目を疑った。
生徒会室は先程まで何時もと変わらない平和な空間だった
しかしそれはもう一人のメンバースザクが入ってきた時から一変した。

スザクが銃をルルーシュに向けたのだ

「君がゼロなんだってね?僕を皆を騙していたんだね」
「はぁ…何を言うかと思えば…そんな筈ないだろ?」

銃口を向けられているのにも関わらずルルーシュは溜め息をつきスザクを相手にしていない用だった。

「そうよ、ルルがゼロだなんて」
「まったくスザク冗談キツイぜ」

同じ様に生徒会メンバーも本気にせずにいた
しかし

「冗談じゃない!」

パーンっっ

「「キャー」」

スザクが銃口を天井へ向け発砲した
それによりメンバーは顔色を変える
撃った本人は今までに見たことがない様な冷めた目でルルーシュを睨み付けたまま

「冗談にこんな物持って来ないよ」

銃口を再びルルーシュへ向ける
ルルーシュは一瞬眉を潜めるが直ぐに何時もの冷静な顔に戻る

「だったら尚悪い…誰にそんな事吹き込まれたかは知らないが残念ながら俺はゼロじゃない」
「そうよ…まずは落ち着いてスザク君、一体誰に聞いたの?」

ミレイがスザクを宥めようとする
そして次の瞬間ミレイの問の答えになる人物の名前に周りは凍りついた。

「ユーフェミア殿下だ!」
「「「!!」」」
「ユフィ…が…」

全員が耳を疑った
何故皇女殿下様がこの学園の副会長の名を知っているのだろうか
全員が混乱している中一番に口をひらいたのは

「俺じゃない!!」

先程まで冷静にスザクを相手にしていなかったルルーシュだった
焦ったように声を荒らげ必死に否定を繰り返す

「違う!違う!俺じゃない!」

首を振り、違うを繰り返すこんなルルーシュ見たことない

「彼女が嘘をつく筈ない!」

しかしスザクは一向にルルーシュを信じようとしない
何故?何故スザクは俺を信じてくれないんだ!?
ルルーシュは悲しくて仕方なかった

「スザクっ俺はっ!!」


パーンっっ!!

「「キャーっ!!」」
「うっ…」

再び銃が火を吹いた
ルルーシュが床に蹲る
その膝からは赤い液体が流れ出る

「どうしてまだ嘘をつこうとするのルル…僕は悲しいよ」

悲しいのは自分だ、その言葉を呑み込みながらルルーシュは言葉を続ける


「ユフィは信じて何で俺を信じてくれないんだ!?スザク…」
「だって彼女が嘘をつくと思う?ねぇルルーシュお願いだ正直に本当のこと言おう?僕も一緒に償うから」

再び引き金に指をかける

「スザク…」
「スザクやめろ!」
「スザク君っ」

その時だった

パリーン!!

「「キャー」」

突然生徒会室の窓ガラスが割れる
 
「なっ何だ!?」

皆一瞬の事で何が起こったかなんてわからなかった

「あっあれ!!」

すると、シャーリーが窓の外を指差した。
そこには、一機のナイトメアの姿があった。

「あれ確かテレビで…」
「ちょっ黒の騎士団の…ゼロが乗ってるやつだろ?」
「ガウェイン…」
「そうそれ!!」

スザクが呟いた名前にリヴァルはビシッと指を立てる

「何で…っ皆早く逃げるんだ!!」

同じくガウェインを見つめていたルルーシュが焦った様に皆に避難を命じる
それに従うように皆が部屋の出口へ向かおうとしたその時だった。

『ピピッ…バシュー』

電子音と共に反対側から扉が開かれた。

「!!」

皆現れた人物のあり得ない姿に目を疑った。

「「カレン!?」」

呼ばれた少女が着ているのは学園の制服ではなく黒の騎士団の制服
そして片手に銃を構えていた。

「皆悪いけど大人しくしてそしたら危害は加えないから…」
「嘘だろ?カレン」
「何でカレンが?」
「私には日本とブリタニアの血が流れてるの…ねぇミレイ会長?」

カレンが顔を向けるとミレイは首を縦に振った。

「「!!」」
「それより他の生徒は無事なの!?」
「えぇ他の団員達が抑えているけど、手は出さない様にって命令だから」

他の生徒達も無事だと聞きミレイは胸を撫で下ろした。

「カレン!!これはどういう事だ!?」

カレンは名前を呼ばれ視線を未だ床に座り込んだままのルルーシュへと移した。

「申し訳ありません…しかし命令ですので…」

カレンは軽く頭を下げると直ぐに視線を彼に銃口を向けている男へと向ける

「いつまで銃口を向けている気?しかも怪我をさせるなんて、この方はアンタなんかが傷を付けて良い方じゃないのよ?」

カレンがスザクに向ける眼差しはとても普段の彼女からは想像が出来ないほどに冷たいものだった。

「その態度…やっぱり彼がゼロか…」

ルルーシュに敬語など使った事がないカレンの畏まった物言いにスザク同様誰もが本当に彼がゼロではないのかと思った。

が、その時だった
 
「違うな…間違っているぞ枢木スザク!!」

室内に声が響いた
突然響いた声に全員が、声が聞こえた方向ガウェインへ顔を向ける
するとコックピットのハッチが開き仮面の男が現れた。

「「「ゼロ!?」」」
「なっ何でゼロが?だってゼロはルルーシュじゃ…」

ルルーシュと仮面の男に交互に視線を向けスザクは混乱していた
ルルーシュがゼロではなかったのか?ならこの人物は誰だ?

「ゼロは私だ」

仮面の男はガウェインから降りるとゼロと名乗った。

「嘘だ!!だってルルーシュがゼロだってユフィが!どうせ貴様は偽者なんだろ!?仮面を被ればいくらでもっ」

スザクは銃口を仮面の男へ移す

「はぁ…仮面か…そんなに顔が見たいのなら…」

『カチッ』

仮面の男は溜め息をつきソレを外しスザクの足下へ転がした

「ほらこれで良いだろ?私がゼロだ」
「嘘…」
「ルルーシュ?」
「ルルーシュが二人?」

仮面の下から現れた顔に皆が目を疑った

「まさか…生きていらしたなんて」

しかしミレイだけは違った
彼女は肩を震わせながら涙を流していた
そんな彼女にゼロは

「久しぶりだなミレイ、今までこの子を守ってくれてありがとう」

と、優しい笑みを見せた。

「会長!アイツは何者なんですか!?」
「双子なんだよ。私達は」

涙を流し続けるミレイにスザクは問うが、その問いに答えたのは他でもなくゼロだった。

「双子!?」
「そう双子…私達は二人で一つ…どちらが欠ける事も許されない」
「そんなだってルルーシュには血の繋がった兄弟はナナリーだけだって」
「それは表向きだよ、真実は違う…私は存在を抹消されたんだよ母が死んだ時…皇帝に謁見を申込んだ後直ぐにな」
「そんな…」
「まぁお前には関係の無い話だがな」

そう言うとゼロはルルーシュの方へゆっくり足を進めた。

『パンっっ』

「動くなっっ!」

ゼロの爪先の直ぐ側で煙があがっている
撃ったのはスザク
ゼロは一旦足を止めた

「ルルーシュに近付くな!」

言うとスザクはゼロとルルーシュの間へと入る

「スザク…」
「近付くなだと?貴様そんなこと言えると思っているのか?」

ゼロは目を細めスザクを睨んだ

「貴様はユフィを選んだんだろ?そしてルルーシュがゼロだなんて寝言を言ってこの子に怪我をさせた」
「ぅっ…」
「優しいルルーシュを疑いあの魔女を選んだ…お前が処刑されそうになった時私に助け出すように泣きついてきたんだよ?なのにお前は」
「違うっっ!」
「違わないさ!現にほら…お前は手に持っているじゃないか」

ゼロはスザクの手にしている銃を指差す

「ちっ違う!違うんだ!」

スザクは銃を床に落とすとこれ以上は聞きたくないとでも言うように耳をふさぐ

「もうやめろゼロ!」

声を上げたのはルルーシュだった

「ルルーシュ…もう良いだろ?こんな奴ユフィにくれてやれ、そしてお前もいい加減此方へ来るんだ」
…」

ゼロはルルーシュへ手を差し出すがルルーシュは両手を握りしめ黙ったままだった

「はぁ…ルルーシュ…こいつはお前の事などどうでも良いんだ、だからユフィの言うことを真に受けるし、お前が女だと言うことにも気付かない…」
「「!?」」

ため息混じりにゼロが喋った言葉に部屋に居る殆んどの人間が耳を疑った

ルルーシュとミレイは黙って目を伏せる

「嘘…だ…だってそんなっ女の子だなんて…」

スザクは耳から手を離しルルーシュを見る

すると、目が合うがルルーシュは直ぐに視線を外す
 
「仕方ないだろ?日本で生きて行くには、そうした方が都合が良かったんだ、それにお前が信用の出来る人間なら彼女も教えていたさ」

ゼロは「なぁルルーシュ」と優しく微笑みながら今度こそルルーシュの傍へ行く
そしてルルーシュの目線に合わせるように膝をおる

「ゼロ…」
「ルルーシュお前は十分頑張った、でももう枢木スザクは諦めろ」

ゼロは優しく言い聞かせるようにルルーシュの頭を撫でる

「いくらお前があいつの事を想ってもあいつは答えてくれないだろ?答えるどころか裏切る…それも最悪な形でっ!!」

そして今度は語尾荒らげスザクを横目で睨める
ルルーシュはその間、黙ったままただ瞳に涙を溜め肩を震わせるばかりだった。
ゼロは彼女に視線を戻すと涙を優しく舌ですくい

「でもルルーシュ?私ならお前の想いに答えてやれるいやそれ以上のモノを与えてあげるよ?私はお前を愛してる…お前以外などどうでも良い」
「ゼロは…愛してくれるの?」

ルルーシュが震える声でやっと言葉を返すとゼロは彼女を優しく抱き締め頷いた

「だっ駄目だ!ルルーシュ!」
「スザク?」

ルルーシュは名前を呼ばれゼロの腕の中でスザクの方へ顔を向ける

「ゼロなんかと一緒に行っちゃ駄目だ!!ルルーシュっ!僕が絶対創るから!ルルーシュの為に優しい世界を創るから!」

必死にルルーシュを引き留めようとスザクを見てゼロは

「貴様の傍でこの子が幸せになることなど無理だ!!ユーフェミアの騎士殿」
「ユフィの…」

ゼロの言葉を聞きルルーシュ上げた顔を再び俯けてしまった。

「貴様の主はユーフェミアだろ?アイツの騎士がルルーシュを幸せに出来る筈がない」
「何故だっ!」
「おや?何故?そんなこともわからないのか?騎士とは主がどんな命を出そうが従い果たす、主が示す道こそが絶対、例えそれが己を滅ぼすことになっても…それが騎士だ」
「そんなこと知っ」
「知っている?本当か?」

スザクの言葉を遮ったゼロは立ち上がると首をを傾げる

「それは本当か?ならばお前はルルーシュを捕らえるのか?あぁそれとも殺すのか?ゼロとして…」
「なっ!何を…」
「ユーフェミアはルルーシュがゼロだと言ったんだろ?」

ゼロは首を傾げたままにっこりと微笑んだ

「…でもルルーシュはゼロじゃなかった!だからっ」
「でも?だから?ふざけた事を抜かすな!!」

バンっとゼロの拳が壁を叩いた

「主の命に従うって言うのはそう言うことだ!やれと言われたらやる、どんな理由があろうとなっ!それが出来ないなら最初から騎士になどなるな!」

感情を剥き出しにしゼロはスザクを怒鳴り付ける

「それにルルーシュを此処に残してもあの女はまた理由を付けてこの子を殺しにくる」

ルルーシュはぎゅっとゼロのマントを握る

「そんなっ何故!?」
「今回のが良い例よ」
「え?」

部屋の中心で言い争うようにしていた二人だったが、第三者のカレンが発した言葉に一時会話が途切れた。

「申し訳ありません、ゼロしかしこれでは拉致があきません…だからもう言ってしまわれた方が良いかと…」
「そうだな…すまない…簡潔に言おう枢木スザク、ユーフェミアにとってルルーシュの存在は邪魔でしかないんだ」
「「!!」」
「ちょっと待ってよ!何でユーフェミア様が?ルルーシュを?」
「あぁ訳がわからねぇ」

ユーフェミアがルルーシュを殺したい、あの慈愛の姫が何故、皆反応は様々だったがスザクを含めた全員が頭を抱えた
 
「さぁ何故だろうな?何故だと思う?」

そんな皆を見てゼロはクスリと笑う

「それは…ユーフェミア殿下が貴方を愛しているから」
「え!?」
「かっ会長!?」

ゼロの出した問題に答えを出したのはミレイ
小さく呟いたそれはしっかりと皆の耳へと届く

「会長~いくら何でもその答えは」
「本当よ、昔から殿下は…」
「良く覚えていたなミレイ」
「マジかよ…」

出た答えはスザクの納得出来る様なものではなかった
彼女は自分を好きになれと好きになると言ったのに

「残念ながら本当だよ、昔からアイツはゼロ・ゼロとまとわりついて…はっきり言って私にはうっとおしい以外の何者でも無かったが…この子以外はどうでも良かったからな」
「そんな…」
「それが彼女には気に食わなかったんだろう、何時もルルーシュの事を目の敵にしていたよ…そして今回も」

言いながらルルーシュの頭を撫でると彼女は唇を噛み締めた。

「どんな理由が有るにせよアイツに正体を明かすべきでは無かった…まさか自分の駒をここまでモノにしているとは思わなかったよ」
「駒…」

ゼロが言った言葉にスザクが眉をピクリと動かす

「そうだろ?貴様みたいな人間は敵にするより手元に置き駒にしたほうが良い…アイツにしては良い考えだったな」
「っ…」
「本当に貴様は愚かだな、本当に自分を想っている者には気付かずに偽りの愛を信じるなんて」

笑い出すゼロ
しかしスザクは何も言えなかった
ショックが大きすぎて、ただ手を握りしめるだけ
そんな彼を見て

「スザク…」

ルルーシュは手を伸ばそうとする

「ルルーシュ!」

しかしゼロに呼び止められビクッと手を引っ込めてしまう
ゼロはしっかりと彼女を抱き締め目を細めながら

「ルルーシュ愛しているよ」

彼女の耳元で囁く
ゼロの愛の言葉を聞きながらも
ルルーシュの視線はスザクの方を向いていた
そして、暫くの沈黙の後ルルーシュはゆっくりと
顔を兄の方へとあげる

「ゼロ…俺は…」
「ルルーシュΣ!?」

漸く分かってくれたかと一瞬喜びの色を
見せたゼロだったが、それは妹の顔を見た途端に一変した。
ルルーシュが泣いている
それも嬉涙ではなく明らかに悲痛からくるモノを
自分の告白はそんなに彼女を苦しめるモノだったのだろうか?
ゼロが困惑する中、ゆっくりとルルーシュが言葉の続きを話し始めた。

「ゼロ…俺は、私は…スザクと一緒にいたい、でもゼロも好きだから…だから両方の手を取りたいんだ…どっちかなんて選べないんだ…」

言いながらもルルーシュの涙は止まることがなかった
 
「「ルルーシュ…」」

生徒会メンバーは初めて見る学友の姿に戸惑っていたが、
今はもうコレが本来のルルーシュなのだと3人のやり取りを見て思い始めていた。

「ルル…僕は…」

彼女の言葉を聞いてかスザクが漸く顔をあげる

「ルルーシュ…ごめん!僕は本当に馬鹿だった…本当にごめん君を信じてあげられなくて…
守るどころか君を撃つなんてっ!!」
「スザク…」
「本当にごめん!!」

必死に謝るスザク
それを見つめるルルーシュ

「スザク…もういいんっ」
「ルルーシュ!!」

スザクにルルーシュが言葉を返そうと口を開いたその時だった
ゼロがルルーシュの言葉を遮り、彼女の顔を強引に自分の方へと向ける

「ゼロっ!!」

ゼロの次の行動を予想したルルーシュは慌てて、顔を反らそうとするが
しっかりと両手で顔を固定されそれは叶わない
更にゼロの顔が接近して目を反らすことさえ許されなくなった

「嫌だっ!ゼロっそれだけはっ!!だっ」

そして遂に

「ルルーシュ!!私のモノとなれ!!私以外を見ることなど許さん!!」

ゼロの左眼から紅い鳥が飛び立ちルルーシュの瞳を射貫いた
紫電の瞳が紅に支配される

「スザ…ク」

ルルーシュはスザクの名を呼んだのを最後にゼロの腕の中で瞳を閉じた。
 
「「ルルーシュ!?」」

いきなり意識を失ったルルーシュにスザクを含め皆が驚いた
分かるのは今一瞬何かが彼女の身に起こった

そして、それを知っているのは多分ゼロだけだと言うただそれだけだった

「ゼロ!ルルーシュに何をしたっ!」
「何も?ただ眠っただけだ」

スザクの問いにゼロは、しれっと答えた。
が、そんな答えでスザクが納得する筈もなくさらに噛みつく

「眠っただけって…ふざけるな!!ルルーシュを返せ!!」

今にも掴みかかってきそうなスザクを余所にゼロはルルーシュを抱き抱え立ち上がる

「返す?何故だ?この子は私のモノだ、誰にも渡さない」

そして眠るルルーシュの瞼に愛しそうにそっと口付ける

「なっ!?そんな勝手な!」
「…勝手だと本当にそう思うか?ならば本人に聞いてみるかな?」

そう言うとゼロは静かに眠る妹の名前を呼ぶ

「ゼ…ロ…」

名前を呼ばれルルーシュはゆっくりと瞼をあける
完全にルルーシュの瞳が開いたのを確認するとゼロは

「ルルーシュお前は誰のモノだ?」

と、ルルーシュに問う
するとルルーシュは両手をゼロの首に絡め相手の唇に自分のを重ねた

「何言ってるんだ?俺はゼロのモノだ、ゼロ以外何も要らない」
「私もだよ、私もお前以外何も要らない」

言い終えるとルルーシュは再びゼロに口付けた。
ゼロは目を細めると横目で呆然と見ているスザクへと視線を送る

勝ち誇った様な

スザクを哀れむ様な視線を

「ルルーシュ!!」

そんな、視線に耐えきれなくなったのかスザクは思わず彼女の名前を叫ぶ

己を見て欲しいと言う願いを込めて

しかしその願は残酷にも彼女によって打ち砕かれる
ゼロの唇から離れルルーシュはスザクへやっと視線を向けた

「スザク…」
「ルルーシュ!」
「スザク…お前なんかもう要らない」
「Σ!!え…」

スザクは耳を疑った

「俺にはゼロがいればいいんだ、だからゼロの邪魔ばかりするお前なんて要らない」
「…ルルーシュ何言ってるの?」
「だからユフィの所でも何処へでも行けば良い、さよならスザク」

言い捨てるとルルーシュはゼロへ再び視線を移し優しく微笑む
そして

「愛してるよゼロ」

誰もが聴いたことのない様な甘く蕩けそうな声だった
 
『愛してるゼロ』

明らかにルルーシュの様子がおかしい
まるで先程とは別人のように
彼女の瞳はゼロしか映してていなかった

「そんな…ルルーシュ…」

しかし彼女に言われた言葉にショックを受けたスザクはそんな事も気にすることが出来ず
ガクリと肩を落とした
逆にゼロはそれに満足そうに笑む

「んー…」

すると腕の中でルルーシュが眠そうに目を擦った
怪我をしているせいもあるのだろう

「ルルーシュ疲れているだろ?少し眠ると良い…大丈夫私はずっとお前の傍にいるよ…」
「ああ…」

そう言うとルルーシュはゆっくりと瞳を閉じた
それを確認したゼロはルルーシュを包み込むようにマントを翻した
まるで穢いモノから隠すように

「それでは、ゼロ」

ルルーシュを抱き上げ、カレンに呼ばれたゼロは頷く

「もう此処には用はない」
「では」
「あぁ帰るぞ、早くこの娘の止血をしてやりたい」

ゼロはルルーシュを抱えたまま、皆に背を向けガウェインに向かって歩き出す
その後ろにカレンが続く

「ナナリー様の方は既に咲世子の方が」
「そうか」

ゼロはルルーシュを抱えたままガウェインのコックピットへ座ると

「迷惑をかけたな、騎士団も直ぐに退かせる、では今までルルーシュが世話になったな。ミレイも元気で」

ニッコリと笑い全員へ礼をする
しかし、一人愕然と床へ座り込んでしまっているスザクに対しては

「それではユーフェミアの騎士君さようなら」

勝ち誇ったように笑い、眠ったままのルルーシュの右手を掴み本人の代わりに手を振る
カレンもガウェインの肩に乗ると

「次は戦場で会いましょうね」

と、吐き捨てる様に言うが
当の本人にはもう話を聞く程の気力は残っておらず
ガウェインのコックピットが閉まりルルーシュの姿が見えなくなってしまっても
ただ眠り続ける彼女を見送ることしか出来なかった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

【あとがき】


いきなりですが!!
本当に色々すみませんでした!!
これでやっと完結です!!
スザク&ユフィに厳しいし本当に色々すみませんでした(土下座)