スザク・・・
俺の隣にはいつもお前がいて
他愛の無い話で笑ったり泣いたり
そんな当たり前の毎日がずっと
続く思っていたのに・・・
**************
「ぇ・・ねぇルルーシュ!!」
アッシュフォード学園の教室
一日の授業が終わってもなお席にぼーっと座り続けるルルーシュにスザクが声をかけてきた。
「!あっスザク・・な・何だ?」
「はぁ・・もう授業終わったよ??」
未だ授業が終わったことに気づいていないルルーシュにスザクは呆れ
「すまない、今準備する」
ルルーシュは慌てて帰り支度を始める。
「今日は確か、生徒会なかったよね?」
「あぁ、確かそうだったな・・」
頭の中で予定を思い浮かべながら答える。
「じゃぁさ!ちょっと街に出ない?軍の方も今日は休みなんだ」
目を輝かせながらスザクが、余りにも仔犬みたいで思わず吹き出してしまいそうになる。
「そうだな、丁度買いたい本もあるし行くか」
***************
「こういうの、久しぶりだね」
目的の買い物を終え、二人は最近新しく出来たと女子が騒いでいたカフェで休んでいた。
「あぁ、そうだな・・コホコホ」
「前から気になってたんだけど、最近、咳多いよね?」
もう何回目か分からない、ルルーシュの咳に心配そうな顔でスザクが問いかける。
「風邪だろ、大した事無いよ」
「そうかな??だと良いんだけどね?最近ルルーシュなんか様子おかしいし・・」
確かにそうだ。
ルルーシュは自分でも最近の自分はおかしいと思っていた。
咳だけじゃなく、意味も無くぼーっとしたり、眩暈がしたりと調子の悪いことばかり多くなってるような気がしていた。
しかし、ここで先程のスザクの意見に頷いてしまえば、余計に心配をかけてしまうと思い、話はしなかった。
今思うと何故あの時俺は少しでもお前に相談しなかったんだろう・・
そしたら何か変わっていたかもしれないのに・・
後悔
後悔
涙が止まらないよ
スザク・・・・
俺は何で・・・・・
* ***********
その日、思ったより早く軍務が終わったスザクは少しでも生徒会の仲間たちに会いたくて、クラブハウスへと急いでいた。
「あれ?スザクじゃん!」
靴を履き替えていると、背後から聞きなれた声が聞こえてきた。
「あっリヴァル!どうしたの?もう帰るの?」
「帰る帰る、バイト入っててさ~、俺も結構多忙なわけよ」
リヴァルは愛用のヘルメットをかぶりながら、お前も頑張れよとスザクの肩をポンポンと叩きバイクへと走って行った。
リヴァルの背中に手を振り、廊下をなるべく走らないように気をつけながら、早足で歩いていると今度はシャーリーが走ってきた。
「あれ、スザク君!!今日は学校に来れたんだね♪」
「うん、でももう授業全部終わっちゃってるけどね」
廊下にある時計を指差しながら、スザクは苦笑した。
「仕方ないよ、仕事でしょ??」
「そう言ってくれると助かるな」
「でも・・今日は生徒会中止みたいだよ??リヴァルも会長もニーナも用事があるみたいでさ~、あっカレンは学校にさえ来てなかったな・・・」
シャーリーは言いにくそうに生徒会が休みだと教えてくれた。
「それは、とても・・・残念・」
スザクはガックリと首を折った。
「でも明日はあるよ!明日は朝からいるんでしょ??」
スザクを元気づけようと、気を使ってくれ、なんだかその気持ちがとても嬉しくてスザクは思わす顔が綻んでしまう。
「うん明日は一日いれそう」
「よかった~久しぶりに皆揃えるといいね♪」
「そうだね!じゃぁ僕は前、生徒会室に忘れた本取りに行くから!!」
シャーリーはバイバイと手を振りながら、プールのほうへ向かった。
おそらく、部活に出るためだろう。
生徒会室についた、スザクは本を見つけカバンに入れた。
「これでよし!」
目的を果たしたスザクは帰ろうと部屋の電気を消した。
「あれ??誰かいる??」
電気が消えて真っ暗な部屋の奥から、少し灯りがもれていた。
そこは、生徒会業務で徹夜などをする時に仮眠をとったり、寛げるようにつくられた部屋だ。
僅かに開いている扉の隙間から中を覗く。
そこには、机に肘を着きながら本を読んでいるルルーシュがいた。
スザクは邪魔をしないように静かに部屋の中へ入った。
「ルルーシュ?」
本に夢中なのか未だに自分の存在に気付かない彼の名前を呼んでみる。
「……」
しかし、返事どころか反応さえない。
不信に思ったスザクは、先程からずっと本の方を向いている、ルルーシュの顔を覗き込んだ。
長い睫毛がアメジストの宝石を隠している。
(うっ…やっぱり…寝てる)
呆れて思わず苦笑してしまう。
「流石居眠りの天才…遠くからじゃ気付かなかったよ」
音を立てない様に隣の椅子に腰をかけ、彼の寝顔を眺める。
普段起きている時も綺麗なルルーシュは、こうして眠っている時も美しく、まるで眠り姫のようで思わず見とれてしまう。
気が付けば無意識に自分の唇を彼の唇に近づけてしっていた。
しかし唇と唇が触れるギリギリで一旦止め引き返す。
が、次の瞬間
「!!え?」
逆に今まで眠っていたルルーシュの唇の方から自分に触れてきた。
「意気地なし…」
少し不機嫌そうにアメジストを細めながらルルーシュは呟く。
「////なっ!!酷い!!起きてたの??」
「あぁ…途中からな…ファァ」
まだ眠いのか、欠伸をしている。
「居眠りだけじゃなくて、狸寝入りも得意なんだね」
敵わないなと、スザクは頭を掻く。
「そういえば…他のやつらはまだか?」
チラリと時計に目をやり。
「え??聞いてない??さっき僕も廊下で聞いたんだけど急遽休みになったんだって」
ルルーシュは仕方ないなと溜息をつき、机の上の本を閉じた。
「今日はこの後、用事ないんだよな?」
「え?うん生徒会が無いなら、もう帰って寝るだけかな」
「じゃぁ…ちょっと…付き合わないか?」
珍しいルルーシュからの誘いにスザクは素直に頷いた。
*****
「あれ??」
「ん?どうした?」
クラブハウスの玄関まで来ると、スザクは不思議そうに
「外に行くの??」
「そうだが??どうかしたか??」
さも当たり前かのようにルルーシュは返してくるが、今まで彼は放課後スザクが誘う以外自ら望んで外に出るような人間ではなかった。
「ちょっと歩くがいいか?」
「うん大丈夫だよ♪」
学校の門を出て少し歩く。
次第にすれ違う人も減ってきた。
「ルルーシュ」
スザクはルルーシュの片手に手を伸ばした。
ルルーシュは無言で伸ばした手を握った。
普段人目が気になるが、すれ違う人も少なく、空もすっかり薄暗くなってきた。
「悪いな…寒くないか??」
「え?僕?平気だよ、ルルーシュは大丈夫?」
「・・・から」
余りにも小さい声だった。
しかしスザクはそれさえも聞き逃さなかった。
「僕もルルーシュの手が温かいから平気♪」
「恥ずかしいやつ…///」
スザクの返事が嬉しくて、ルルーシュは顔を少し染め、繋いだを強く握った。
二人だけの世界…
手から伝わるお互いの体温がとても心地良かった。
*****
「着いたぞ」
もう街さえ見えなった頃、ようやくルルーシュは足を止めた。
随分歩き、もう辺りは真っ暗だった。
「ここ??」
着いた場所は街外れの公園だった。
山の中のみんなに忘れられた公園
コクンと頷くと公園の中心まで歩き大きな樹の下にあるベンチに座り、スザクを呼ぶように手招きする。
「月…綺麗だな…」
「君の方が綺麗…///あっ!//」
月を見上げるルルーシュを見て、思わず心の声が出てしまったらしい彼を見て「馬鹿言え」と苦笑をした。
「この樹…桜の樹なんだ」
「え!?本当!?」
スザクは視線を樹に移す。
「あぁ、あと3ヶ月くらいで咲くんじゃないかな」
「そうだね、桜はそのくらいの時期だし」
嬉しそうに桜の樹を見上げる、スザクを見ていると、思わず自分も嬉しくなってくる。
「今日はすまないな…こんな遠くまで…」
携帯の時計を見ればもう20時をまわっている。
「え?何で?ルルがせっかく誘ってくれて、こんな素敵な場所教えてくれたんじゃない!」
それにと言ってルルーシュの後ろを指差す。
「まだ16時♪」
スザク指の先には、16時で時間の止まった時計が、そのまま設置されていた。
「ハ…ハハハ…確かに…可笑しなやつだな」
予想もしていなかった言葉に腹を抱えて笑ってしまう。
「いつから、16時で止まったままなんだろうね…」
「誰も来なくなったんだろ」
余程の物好きでなければ、こんな所に来ないだろう。
「時間が止まったままなんて、何だか寂しいね…」
あぁ
そうかもしれない…
でも俺は出来ることなら
このまま…
お前と一緒のまま…
時間が
止まってしまわないかと…
「ここ、君が??」
「あぁ…考え事をしてたら見つけたんだ」
先日、一人になりたくてひたすら歩き続け、たまたまこの公園を見つけたのだ。
「スザク桜好きだったろ?だから、お前にだけは教えようと思ってな」
「じゃぁルルと僕の秘密の場所だね♪」
秘密基地が出来た子供のように、はしゃぐスザク
「ねぇ!桜が咲いたら二人でお花見しようよ!」
「花見?」
「うん!きっと綺麗だよ、僕こんな大きな桜のお花見はしたことないんだ♪」
楽しそうなスザク…
そんなスザクを見ていると
俺も楽しくなって…
楽しくなる筈なのに…
「ルル…どうしたの?」
「何でもない…」
ルルーシュは思わず顔を反らしてしまう。
「何でも無くないよ!!」
スザクは反らされた顔に手をやり、自分の方を向かせた。
「なっ!!」
「なら何で泣いてるの!?」
「え?」
言われて初めて自分が泣いていることに気づいた。
スザクは驚くルルーシュの涙で濡れた、顔を自分の制服の袖で優しく拭う。
「何かあったの??」
問われても、ただ首を横に振るだけ
「本当に何でもないんだ、ただ目にゴミが入っただけだ」
と言ってルルーシュはぎこちなく笑った。
そんな顔を見せられては、これ以上聞くことも出来なくなってしまう。
スザクは一言、わかったよと言ってルルーシュを抱きしめた。
腕の中の彼が震えていることに気づかないフリをして。
(ごめんなスザク…俺にはもう時間が無いんだ…)
*****
帰り道、来た道を二人で星を眺めながら歩く、もちろん手を繋いで
暗い山道も二人いれば怖くなんかない
急に、ルルーシュの足が止まった。
「ルルーシュ??」
見れば、繋いでいない方の手で口元を押さえている。
「ぐっ…げほっ…ゴホ…うっ」
ルルーシュの指と指の間から、赤い何かが零れ落ちる。
月明かりに照らされ、それが血だとわかる。
咳き込むごとに、その量は増していく
「ルル!!」
「だ…大丈夫だ…これは新しく作られた血が…血管に収まりきらなくなって…口から出てきているんだ…だから大丈夫だ」
血を吐きながらも、明るく振舞おうとするが
「ルルーシュ!!」
スザクの声に肩をビクッと震わす。
「冗談じゃない!いくら僕が馬鹿だからって、そんなこと信じる筈無いだろ!?」
一瞬にしてルルーシュを横抱きにし、スザクは山道を走り出した。
「なっ、降ろせ!」
「嫌だ!大人しくこのまま病院に」
「病院!?だっ駄目だ!!」
スザクは病院と聞き暴れだすルルーシュを無視し走り続けた。
途中ルルーシュは、また咳き込み意識を失った。
俺の時間…
もうもんなにも少ないんだろうか・・・