Cry for the moon

 

 

「お兄様が死んだ…」

スザクが口にした言葉にナナリーも震え出す。

「嘘よ!嘘ですよね!?スザクさん!?」

スザクの握った手を揺さぶる
しかしスザクは依然電話に向かい嘘だと繰り返している
すると、ナナリーの声が聞こえたのか

『あれ?ナナリー皇女殿下も一緒なんですか?』

少しロロの声が低くなる

『嘘じゃないですよ、兄さんは死にました。まぁ肉体的には生きてますけど…』
「っ!!どう言うことだ!?」
『どう言うことだも、何もそのままですよ』
「なっ!ふざけ」
『リフレイン…』
「!!」
『知ってるでしょ?』
「まさか!?」
「え…」

仕事で何度かリフレイン事件を扱ったことがある、スザクはその薬がどれ程恐ろしいものかわかる
そして、ナナリーも

「まさかルルーシュが」
「お兄様っ」
『そう、それも通常の倍の量…』
「何で…」
『何で?良くそんなこと言えますね?』

電話の向こうでロロは冷たく吐き捨てる

『戻っていたんですよ?記憶…貴方も薄々気付いていたんじゃないですか?それなのに、此処まで追い込んで…』
「それじゃぁやっぱり彼が…」

無意識に声が震える

『ゼロですよ…でも、もういいんです』

スザクとは反対にロロの声が急に明るくなる

「もういい?」
『はい!だってもう兄さんは僕だけの兄さんですから』
「!!何言ってっ!」

ロロの言葉に怒りを露にするスザクの耳に、電話の向こうからロロとは別にもう一人の声が聞こえてくる。

『ロロ?ロロ?何処だ?』
「ルルーシュ!?」

間違い無いルルーシュの声だ。

『兄さん・兄さん此方だよ』
『ロロ!良かったいなくなったのかと思った』
『ごめんね、兄さん、電話してたんだ』

向こうから聞こえてくるルルーシュの声はいつもと変わらない

「ルルーシュ?ルルーシュ?そこにいるの!?」

思わずスザクは電話に向かって叫ぶ
スザクの反応を見て同じくナナリーも

「お兄様!お兄様!」
「ルルーシュに代われっ!」

あまりに二人が、何度も同じ言葉を繰り返すのでロロは

『煩いですよ…』

ルルーシュにかけた優しい声色と違い冷たく言い放つ
しかし、二人は食い下がる
暫くするとロロは呆れたように

『分かりました…ちょっと待ってください』

と溜め息混じりに頷いた。
 
『兄さんに電話だよ』
『電話?』
『そう電話…出て?』

電話の向こうで少し会話があった後

『もしもし?』

遂に彼が電話に出てくれた

「ルルーシュ?」
『そうだが…』
「ちょっと、待っててね」

スザクは確認すると直ぐに隣で心配そうに見ているナナリーへと電話を渡した。

「お兄様!ナナリーです!」
『…』
「今どちらに!?」
『…』

電話に向かって必死に語りかけるナナリー
しかし、ルルーシュは黙ったままで

「…お兄様!?お兄様?」

兄の反応に不安を感じながらもナナリーは、兄を呼び続けた。
すると願いが叶ったのか

『ナナリー?』

漸くルルーシュが口を開いた。

「お兄様!はい、ナナリーです!」

名前を呼ばれ思わず顔が綻ぶ
しかし、次の瞬間彼女は考えられない言葉を耳にする

『ナナリーって誰だ?』
「!!」
『人違いじゃないのか?』
「嘘…」
『嘘なんかじゃ…だって俺には弟しか…』
「そんなっ!この前みたいに、また嘘ですよね!?」

兄が何も言わずに、自分に嘘なんかつく筈がない
だから多分ルルーシュが言っていることは本当
そう知りつつも、ナナリーはたった一人の兄の言葉を信じれずにいた。

しかし

『本当に妹なんかいない!!』

兄の口からでるのは、否定の言葉だけ
やっと兄と話せたのに、あまりのショックにナナリーの手から電話が滑り落ちる。
それを見ていたスザクが直ぐに電話を拾い上げた。

「ルルーシュ!!もう嘘はつかなくて良いから!ナナリーを悲しませないでいいから!」
『だから本当に…』
「ルルーシュ!!」

次第に声が小さくなっていくルルーシュに、思わずスザクは声を荒げる。

『本当に妹なんかいない!!』

それに応えるかのように今度はルルーシュが叫びだす

『俺は妹なんかいない!!いない!いない!いないんだ!!』

駄々を子供のように同じ言葉を繰り返し叫ぶ

「ルルー」
『お前もあの娘も皆!皆!知らない!!』
「!!」
『知らない!知らない!知らない!知らない!』
「ちょっとルルーシュっ?僕もって!?僕はスザっ」
『知らない!!』

ツー…ツー…ツー…

さっきまで聞こえていた、声が聞こえなくなり今度は電子音だけが聞こえる。
電話が切れてしまった
切られてしまった

拒絶の言葉と共に

切れてしまった

僕らの関係も

始めに切ったのは

どっちだったろう…

今となってはもう誰にも答えは

わからない
 
 
****************
 
「ロロっロロ!」

ロロにすがる様に、抱きついてくる偽りの兄
自分より歳も身体も大きい筈なのに本当に小さい子供の様だ

「ルルーシュ兄さん」

名前を呼んで優しく頭を撫でてやれば、次第に震えも落ち着いていく

「ロロ…」
「なぁに?兄さん」

床に転がる携帯電話を指差し

「さっきのやつらおかしいんだ…」
「…」
「俺の妹だって、俺の名前呼ぶんだ…おかしいだろ?」
「うん、おかしいね」
「そうだろ?だって俺には弟しかいないし」
「うん僕だけだ」
「それに…―――――」



**********


「おやすみ兄さん」

ルルーシュを寝かしつけ寝室を後にする
機情の特権を利用し借りた部屋、簡単には見つからない様に情報操作もしておいた
暫くはゆっくり出来るだろ
ソファーに座り、適当に散らばってる雑誌を拾い上げる
そこには、今話題のナナリーと枢木スザクの顔があった。

にこやかに微笑む二人

「あーっ虫酸がはしる!」

ロロはグシャッと雑誌を捻ると壁に勢い良く投げつけた
先程まで、笑顔だった二人の顔は捻られたことにより、醜く歪んでしまっていた。

「あはははは」

それを見てロロは笑いだす
それも腹を抱えて

「お似合いだよ」

きっと、今二人はこんな顔をしているんだと思うと嬉しくて

「もうあなた達には渡さない、あの人は僕のだ」

奪ってやったんだと思うと嬉しくて

「偽物なんかじゃない本物の」

ロロは雑誌をゴミ箱へと持っていく
そして

「あっ」

気がついた

「ゴミ箱、いっぱいだ」

ゴミ箱は、既にいっぱいになっていることに

「まぁ明日捨てればいいか」

ゴミ箱から溢れている

「リフレイももう無いんだっけ?買わなきゃ」

大量のリフレインの空瓶

『兄さん、兄さんには弟しかいないよ?』

『僕以外なんていらないだろ?』

やっと手に入れた

もう誰にも渡さない

「それに…俺はロロしかいらない」

もう僕だけの
 
 
 
 
 
『あとがき』

すみませんっっ!
やっと完結しました!!
毎回ながら何だか本当に恥ずかしい駄文です!!
アニメ本編の方では今シャーリが亡くなってしまって(涙)
これからも当サイトをよろしくお願いします!