『ここにいるよ・・・』

あれからどれくらい時間がたっただろう
スザクは病院の長い廊下を一人歩いていた。
一番奥の部屋の前で、漸く足が止まる

そこは勿論大切な彼の部屋

音もなく部屋に入ると、規則正しい寝息をたて彼は眠っていた
彼を起こさないように、そっとすぐ横の椅子に座る

「ルルーシュ…」

眠りが深いのか名前を呼んでみても反応がない
そっと眠る彼の髪に触れる


「ルルーシュ…君はまた一人で背負い込んで…どうして」

サラサラの髪はスザクの指をすり抜けていく

「そんなに僕って頼りない?」

頬を生暖かいものが流れていくのがわかる
何度自分の袖で拭っても、次から次へと溢れてくる

「もしかして君は僕の前からも…」

ボフッとルルーシュが眠るベッドへ頭を埋める

「そんなのっ嫌だよ…消えないで…ルルーシュが傍にいない方が、僕はっっお願いだよルル…」

病室に悲し気なスザクの声だけが響いていた。
 
すると

Σ
バシッ!!

「うっ」

後頭部に衝撃が走った
衝撃の元はまだスザクの頭に乗ったままだ
顔を伏せたまま手で其を探ると、何やら柔らかく軽いものが頭上に乗っていた。
随分な衝撃だったものの痛みが無かったのはその為だろう

(
何だろう??)

不思議に思い顔を上げると其処には、不機嫌そう自分を見下ろしてるルルーシュがいた。

「煩い!縁起でもない泣き方するな」
「うっ…ごめっだっでぇ…」

多分自分は、今余程情けない顔をしているだろう
スザクは近くにあった布で涙や鼻水を拭った

「汚っ!おいシーツに拭うな!」

ルルーシュは慌てて、ベッドの横に備えてある机からティッシュペーパーを二・三枚取りスザクの顔を拭ってやる。
漸く落ち着きを取戻し、未だ眉間に皺を寄せているルルーシュから目を反らしながら

「ルルーシュ起きてたの?」
「あぁ…誰かさんが枕元で啜り泣いてくれたお陰で目が覚めてしまった」

まともに目が見れない
別に自分が悪いことをしたとか、いや確かに起こしてしまったが、そう言うわけではないのに何故かルルーシュと目を合わせられない
気まずい空気が二人の間を流れる。
でも言わないと変わらないそう決心したスザクは

「ルルーシュ!!」

彼の名前を呼び真っ直ぐ目を見た

言わなければ

「ルルーシュ!僕はっ…君と」
「傍にいろ…」
「!?」

スザクは耳を疑った。
今自分が言おうとしていたことを先に彼の方が口にしたからだ
自分の聞き間違えではないのか?
そんなことを考えていると

「おい…嫌なのか?」

どうやら聞き間違えではなかったらしい

「いいの!?」
「良いも悪いもスザクが傍にいたいって言ったんじゃないか?」

どうやら彼は随分と始めの方から起きていたらしい、もしかしたら眠ってさえいなかったのかもしれない
しかし、今のスザクにはそんなことどうでも良かった。
彼は消えない、自分の傍にいてくれる
それだけが本当に素直に嬉しかった。
しかしもう一つ問題は残っていた。

ルルーシュの手術につてだ

「それは嫌だ!」

しかし断固としてルルーシュは首を縦に振らない

「でもこのままだとルル死んじゃうんだよ!?」
「別に構わない!」
「構うよ!僕は嫌だ!ルルーシュが死ぬなんて!」

ぐいっ!
勢いよくルルーシュの腕が引っ張られる

「んっ!」

スザクはルルーシュの唇に自分のを重ねた。

「嫌なんだ…こんなに好きなのに…愛してるのに、離れるのなんか嫌だよ…僕を一人にしないでよ…」

(
スザク…)

弱々しく自分の腕を離すスザクを見てルルーシュの心は揺らぐが

「ごめん…スザク」

自分の決心を変えることは出来なかった。

「ごめん…俺には耐えられないんだ…他人のを使ってまで生き長らえることが…他人の命を自分が使うみたいで…人の命は俺には…重いよスザク」
「ルルーシュ…」
「俺だってお前と離れたくない…だからせめて最後までは傍にいてくれないか?その後は俺がスザクを守るから…ずっとずっと傍にいるからっだから!」

気が付けばスザクは、ルルーシュを抱き締めていた。
そうしなければ今にもルルーシュが自分が泣きそうだったから

「わかった…わかったよ。ルルーシュ…それが君の望みなんだね」

ルルーシュは返事をするかわりに、スザクの背中に手を回しギュッと握った。
 
 
*****

 
「ルルーシュ頼まれてた本買ってきたよ♪これでいいんだよね?」

スザクは茶色い紙袋を鞄から出しルルーシュに手渡した

「あぁ、すまないな」

あれからスザクはずっと病院に泊まり込んだ。
少しでもルルーシュの傍に居たいから
彼と約束したから

ルルーシュは紙袋を開け本を確認する

「これで間違いない」

良かったとスザクは、他に買い出して来た日用品を袋から出していく

「それにしても、相変わらず難しい本ばかり読むんだね。僕にはわからないや」

「解らないから読んで理解するんだよ」

呆れながら苦笑するルルーシュは、いつも通りに見える
だが泊まり込むように、なって明らかな違いが見えてきた。
夜中に苦しそうに咳き込んだり、食欲が無いと言って食事を抜いたり、数日激しい頭痛で寝込んだり
体調が思わしくない事を、スザクは嫌でも痛感せざるおえなかった。

そんなことを考えていると

「どうかしたのか?」

ルルーシュが暗い顔をしている、彼を心配したのか首を傾げる 。

スザクは慌てて首を振り

「いやっだから僕は馬鹿なのかなって」

アハハと、笑いながら考えていたことを振りはらった。

「ぷっ、全くだな」
「酷いなぁ、少しくらい否定してよね」

無邪気に笑う二人

あぁこのまま
時間が止まれば


「あっ!そう言えば!」
「ん?どうかしたのか?」

ルルーシュは、本からいきなり声をあげたスザクへ視線を移す

「ロイドさんに買い物終わったら来るようにって言われてたの忘れてたι」
「おいおい、随分時間たってるぞ」
「アハハ…じゃぁすぐ下の部屋だし今からでも行ってくるよ」
「そうしたほうが良いだろうな…俺も少し疲れたし…休むかな…」

ルルーシュは本を閉じ机に置き眠そうに欠伸をした
スザクは、そんな彼に布団を掛けてやりロイドの部屋へと向かった。
 
 
******

 
カチャッとドアを開ける音が聞こえルルーシュは目を覚ました
そして、同時に聞こえる大切な人のダルそうな声

「はぁ~全くロイドさんてば話長いよ」
「ん…スザクか?」

身体を起こし、彼が居る方向を向く

「あ、ごめん起こしちゃったね」
「いや…丁度目が覚めたんだ」

まだ脳が覚醒していないのか視界がボヤけている

「で?何の話しだったんだ?」

まだ暗い部屋の中ルルーシュは、視界を晴らそうと目を擦った。

「いやさぁ、セシルさんが差し入れに持ってきた手料理の感想と彼女への愚痴を延々と…」

スザクは電気のスイッチを手探りで探し明かりをつける

「あぁ、スザクの上司だったよな…確か料理が破壊的に不味」
「ルルーシュ?」
「何だよ、スザク?」

話の途中で名前を呼ばれる

「ルルーシュ…何処見て喋ってるの?」
「え?何処って」

目を擦る手を退けると其処は一面の白
辺りを見回すと、視界の端にボヤけた青と黄色そして茶色の塊写る
そうルルーシュは、全く違う場所を見て話をしていた。
青と黄色、そう言えば今日スザクはそんな色の服を着ていた。

(じゃぁ、あれがスザク)

他に周りを見ても、色の濃い物しか判別出来ない、それもボヤけて見えるだけ

「まさか…ルル…」

震えるスザクの声で現実へと戻される

「嘘っ…ねぇっ嘘だよね!?冗談だよね!?」

スザクは駆け寄りルルーシュの顔を自分へと向ける

「スザク…」
「そんな…嘘っほら見えるでしょ!?僕の顔っこんなに近いんだから!」

スザクはルルーシュの額に自分の額を当てる
しかし、見えるのは霧がかった茶色と翡翠
 
「…」
「そんな…」

ルルーシュの頬を雫が流れる

それは自分のではなくきっと

「泣くなよ、スザク…」
「ぅっだって…」
「大袈裟だな、全く見えない訳じゃない」

泣いているであろうスザクの顔に両手を伸ばす

「俺はスザクが此処にいるってわかるだけで十分だよ。だから…泣くな」

ルルーシュはそう言うとスザクの目を真っ直ぐ見るように優しく微笑んだ。
そんなルルーシュを見てスザクは慌てて涙を拭い

「ごめん…ルルーシュの方がきっと辛いのに…僕が泣いてちゃ仕方ないよね」

ルルーシュの顔に落ちた自分の涙をそっと唇で拭った

「あぁ…俺はスザクの泣き顔より太陽みたいに笑う顔の方が好きだから」

ルルーシュは、スザクに笑っていて欲しいと呟いた。

「ぷっ何だよ太陽って、そんなに眩しい?」
「温かいって意味だよ!馬鹿が!」

オドケるスザクの両頬をこれでもかと言う程引っ張ってやった。


泣かせてごめん

悲しませてごめん

何で俺は

お前に何一つしてやれないんだろう

本当は生きたい

死にたくない

お前と生きたい

でも俺には…
 
 
 
******

 
窓から暖かく心地好い風が流れ込んでくる
まだ少し寒い日もあるが、確実に春に近づいている証
そんな風を肌で感じながらルルーシュはスザクと食事をとっていた。
病人である為スザクとは違ったメニューだが、点滴からの栄養剤だけの食事ではなく自分自身で口にする食事は、ルルーシュの楽しみにもなっていた。

「それは、なぁんだ?」
「ニンジンと…ホウレン草か?」
「おぉ~正解!」

口にする物が目に見えていなくても、まだ舌で判断出来る。
もともと、自分で料理を作ったりもしていたので、舌には自信があるほうだ。
それに、スザクとこうやって今口にした物は何かと当ててみたりするのも悪くない

「あっルル!それは!!」
「ん?っれっレバーっゲホ…ゲホっ」
「だっ大丈夫!?ルル」

時々自分の嫌いな物まで、口に入れてしまうのが難点だが

「もう、ご馳走様?」
「あぁ、もう十分だよ」

スザクはルルーシュと自分の食器を綺麗に重ねトレーにのせ廊下に出す。
 
「何か気になる?」

スザクか廊下から戻って来ると、ルルーシュは黙って窓の方を見つめていた。

「いや、風が気持ちいいと思ってな」
「大分暖かくなって来たからね♪もう春が近いって証拠だね」

まだ寒いけど、そう言って笑うとスザクはルルーシュの肩に上着をかけてくれた。

「年中だけど、春は特に会長が妙な行事をよく思い付いてたな」

まるで昨日の事のように思い出せる楽しかった日々
嫌々参加させられていた妙なイベントも今となっては大切な思い出
もう、其処には戻れないし手を伸ばしても届かない

「あっ!そう言えば!」

無意識にも何処か寂しそうな表情をつくってしまったのか、スザクが話をそらそうと大声をあげる。
 
「?どうしたんだ?」

スザクの不自然にも取れる話の切り換えに首を傾げる

「えーっと…」

話題もなくただ話を変えようとした為に、スザクは頭の中から必死に話題を探す

「あっほら前に連れて行ってくれた公園の桜!あれも、もうすぐで咲くんじゃない?」
「あぁ…そうだな…でもスザ」
「僕が見るから!!」

ルルーシュの言葉を途中で遮り手を握ってきた。スザクの方へと視線を向ける
瞳に写るスザクはやはりボヤけているが、きっと今彼はじっと真剣にこちらを見つめているだろう、あの力強い眼差しで

「僕がルルーシュの分まで!ルルーシュの目になるから!一緒に見に行こう!?」
「スザク…」

スザクが言ってくれたことが本当に、本当に嬉しかった。

「君と一緒に見たいんだ!」

自分がどれだけスザクに愛されているか、どれだけ彼を愛しているか実感する。
こんな絶望的状態の時でも思わず笑みが溢れてしまいそうになる

でも、自分は素直じゃないから

「お前が俺の目?随分と頼りない目だな」


つい可愛くない口を聞いてしまう

それでも嬉しそうに笑ってくれるスザク

本当に

本当に

ありがとう
 
 
「うん♪じゃぁ約束」

そう言ってスザクは握っていた方の手の小指と小指を絡めてきた

「ユビキリと言うやつか?」
「え?そうだよ、よく知ってるね♪さすがはルル」
「ナナリーに聞いたんだ、約束を破ったら針を千本飲むと言う恐ろしい契約だろ?」

ルルーシュの言葉に思わずスザクは吹き出してしまう

「ブッっ!そんな重苦しいものじゃないよ、ルルって冗談通じないなぁ」
「じっ冗談だと、ならばユビキリという約束の意味がないじゃないか!?」

スザクに笑われたのが気に入らなかったのか、ルルーシュの瞳が細くなる

「まぁ、そうだけど何て言うか…あっ!でもこの約束は絶対だからね!絶対桜見るんだからね!ユビキリげんまん…」

ルルーシュの視線から逃げるように目を反らしていたスザクだったが
途中でしっかりとルルーシュの目をしっかりと見てユビキリをやり直した。


ゆびきりげんまん

嘘ついたら針千本飲ます

ゆびきった

嘘ついたら

針千本飲むんだそ!?

そんなの俺はごめんだ

だから絶対


クタバラナイ!
 
 
*******

 
夜就寝前、スザクはルルーシュに頼まれ、本を朗読していた。
読む本は、毎回スザクがルルーシュの希望する本を国立図書館や店で買って来たりしていた。
ルルーシュはスザクが少しでも読みやすいようにと、あまり難しくない本をと考えて選んでくれていた
しかし時々見たことの無いような文字が出てきたりするので、常にスザクの膝の上には辞書が上がりっぱなしだった。

『枢木スザクさん御電話が入っております、至急お近くの事務室までお出でください』

「あれ?僕?」

室内に設置されたスピーカーから自分の名前が聞こえスザクは本のページを捲る手を止める

「あぁ、オマエだ珍しいな病院の方になんて」

病院内では携帯電話の電源を落としている為、普段の連絡はロイドの部屋にある電話で受けているのだ。
だから、館内放送で呼び出されたりすること等無いに等しかった。

「本当に珍しいね…ロイドさんいなかったのかな?」
「アイツはすぐサボるからな…」
「仕方ないなぁιちょっと言って来るねι」

スザクは本と辞書を机に置き立ち上がる

スザクが出ていった部屋に一人残されたルルーシュ

「静かだな…」

音も何も無い世界が少し寂しく感じる
二人の時は寂しいなんて思ったこともなかった
気を紛らわせようと先程までスザクが読んでくれていた本へと手を伸ばす
手探りで探し当てたそれはまだ少し温かくスザクの温もりが残っているようだった。

「んー…」

本を閉じたまま顔を極限まで近付けて見る
しかし、本の表紙に大きく書かれている筈のタイトルさえボヤけて認識できない
解るのは赤い本の色だけ
 
「何してるの?」

ドアが開く音と同時に先程出ていった人物の声が響いた

「いや…見えないかなと…」

ルルーシュは顔から本を離すと元の場所へと本を置いた

「それで見えた?」

クスクスと笑いながら、スザクも元の椅子へと腰をかける

「全然解らないなι…今度点字とか言うのを勉強してみるかなι」

ルルーシュは溜め息をつき苦笑した。

「点字かぁ、ルルーシュそんなの覚えるの?」

机に肘を着きペラペラと本の捲りながらスザクは、凄いなぁと感心する

「ん…いつまでもスザクに読ませるの悪いしな、時間が…あれば勉強して見るのも悪くないな」
…」

ルルーシュの言葉を聞いてスザクは何やら考えるよう黙り込んでしまった。
ルルーシュは反応の無いスザクを不思議に思い首を傾げた

「スザク?」

そんな自分に気付いたのか、スザクは慌て顔を上げる

「あっごめんごめんっ」
「どうしたんだ?何か俺変な事でも言ったか?」

首を傾げたまま問う
すると、スザクは激しく首を左右に振りながら


「違う違うっ、ルルは変なこと言ってないよ!ただ…」

スザクは途中まで言うとモゴモゴと口ごもってしまった
そんなスザクを見ていると可愛くて思わずふきだしてしまう
男のスザクを可愛いなんて思う自分は重症だな、何て心の中で思いながら
 
「ただ…何だ?言ってみろよ」
「いや…さ…ぃなぁって」

ルルーシュに続きを促されて喋り出すものの、所々声が小さくなるので聞き取れない
そんなスザクにわざとらしくルルーシュは

「何だ?聞こえないぞ?スザクどうやら俺は耳まで聴こえなくなってしまったらしい…」

深刻そうに言う眼を背ける
すると

「ちょっとっ!ちっ違うよ!僕の声が小さかっただけだからっ!ルルーシュが勉強始めちゃうと、僕に構ってる暇が無くなるんじゃないかって!そしたら寂しいなって!そんな格好悪いこと言えるわけないじゃないか!////」

スザクは慌て今度は逆に大きな声で喋りだした

「っそんなの気にしてたのか?」
「そんなのって大事でしょっ?ルルの前ではやっぱり格好良くしてたいじゃないか!?」

スザクは拗ねた様に頬を膨らませる
そんな仕草をする時点でもう既に格好良いとか言っているレベルではないが、多分本人は気付いていないだろう

「仕方ないヤツだな」

ルルーシュは呆れたように苦笑しながら本をスザクに渡した

「??」
「お前が読んでくれるんだろ?」
「うん!勿論!」

穏やな優しい笑みを見せられスザクは嬉しくなり、自分も精一杯の笑顔をで頷いた。
 
 
************


本を読み終えるとスザクは紅茶を煎れてくれた

「味どう?」
「……スザクにしては上出来じゃないか?」
「うぁ~何その嫌な間は、その様子だと合格点は遠いな」
「いや、でも最初の頃よりは全然飲めるぞ」
「本当に?僕いつか絶対ルルに美味しいって言って貰えるように頑張る!」

スザクは拳を握りしめ意気込む
日本人だったスザクには紅茶を飲むという機会が少なかった為か紅茶を煎れたことが無かったのである。
だから本当に入院したての頃、彼が煎れる紅茶は最悪だった
しかし、彼が好意で煎れてくれたものを捨てる訳にもいかず無理矢理にでも胃に流し込んでいた。
そんなスザクも最近少しずつだが腕を上げてきている

「あっ!そうだ明日さちょっと軍の方に行かなきゃいけなくなっちゃったんだ」

スザクはそう言いながら茶菓子を机に置いた

「軍…」

カップへ手を伸ばしたルルーシュの指がピクリと反応する
そんな彼の反応をスザクは見逃す筈もなく


「あっ、ただ顔出しに行くだけだから」

直ぐにルルーシュの不安を取り除いた
 
 
頭を優しく撫でてくれる
スザクが好き

ちょっと情けなくて、でも頼りになるスザクが好き

太陽のような暖かい笑顔で笑うスザクが好き

どんなスザクも
好き

本当は正直にいっぱい伝えたい


『好きだよ』

『好き』

『好き』

『愛してる』


でも…
そんなの出来ない…

日が立つにつれて
そんなこと言う資格が無くなっていく

本当に…
お前を残していく俺を許して…

嫌いになって…
憎んだって良い…

そして…俺の事なんか忘れて

忘れて欲しくない…
でも、それは罰だから

これからお前を残していく俺への…